転覆事故を乗り越えて
超波乱万丈な幕開けだった今年の巻き網漁が、今日終了した。
5月9日初出港、5月11日転覆事故。
あの時には本当に、もう今年はどうすることもできない、生きて帰れただけでもありがたい、私はそう思っていた。
だが、命からがら帰港した第八政運丸の乗組員たちは、夫を含めてくじけてはいなかった。
去年まで使っていた第五政運丸を整備して、事故から10日後の21日には、すでに出港していたのだった。
漁師の根性というか、意地というか、その後の大漁続きには目を見張るものがあったよ。
時化も少なかったおかげもあり、最終的には275トンの漁獲を記録した。
あっぱれだ、誠にあっぱれだ。
手放しで褒め称えられるべきお手柄だ。
事故なく操業できていた、もう一杯の船の方は400トンを超える水揚げ。
こちらはただでさえ景気良かった去年の記録をも、あっさりと塗り替えてしまった。
それほど、今年の巻き網漁はすごかった。
35年の歴史に幕を閉じる
この巻き網漁、今年の漁期はたったの35日。
休日はもちろん海次第で、時化以外の日には連日出港する。
中学を卒業してからずっと巻き網の船に乗り続けた夫も、体力の限界を感じて今年が最後だと決めて乗っていた。
そんな矢先の事故だったから、心中いかばかりか、と心配はしたけれど、終わってみれば華やかな引退となったことを、私も誇りに思う。
短い漁期とはいえ、巻き網は過酷な労働だ。
連日、みるみる身体がボロボロになっていく様を間近で見ていると、私まで緊張してくる。
こんな重労働を、夫は35年続けた。
気が遠くなる時間だ、想像もつかない。
過酷な労働の割に、収入は全く安定しない。
私が結婚してから3年間は良くて50万、16万、30万といった数字だったのだけど、去年ブレイク。
300万の大当たりを引き、利尻中の話題を独占した。
肉体労働で一ヶ月300万、今時そんな仕事がどこにあろう。
量が獲れていても、売値が安ければ収入には結びつかないが、去年からホッケは高騰していた。
今年もまた高値。
まだ計算が終わっていないのでなんとも言えないが、今年も去年くらいの収入になるのではないかという話だ。
夫の引退は、まさに見事な引き際といえよう。
まとめ
一生懸命やっていれば、海の神様が微笑んでくれる。
感謝、ひたすら感謝。
そして、我が夫よ。
あなたは本当に頑張りました。
35年間、お疲れ様でした。