利尻の漁師たち
一口に、「漁師」と言っても、その内容は実に多岐にわたる。
ここ、利尻でもいろいろな漁師がいるものだ。
大半は、「磯漁師」と呼ばれ、エンジン付きの小さな船で、主にウニ、昆布を採取する。
人によってはナマコやわかめなども採るけれど、収入のほとんどはウニと昆布だ。
北海道と聞けば、海の幸は何でもござれの天国のように思うけれど、ここ利尻で採れるものは限られている。
少し大きい船を持っている漁師でも、あとはタコやらカニ、ホッケ、小女子あたりか。
釣りとしてならば、イカやソイ、ガヤなど、まあそれなりには獲物はあるが、概ね地味。
それだけウニの存在感が大きいのかもしれない。
何たって、利尻のウニは世界一だからね。
勝手なイメージ通りではなかった
旦那が漁師なら、さぞかし美味しいものが食べられるだろう、と思うのは都会人の証拠だ。
私がイメージしていた漁師とは、まったく違う世界が、ここには広がっていた。
漁について、夫に最初に聞いたのがこの一言。
「やっぱりさ、海に出るときにはサラシ巻くんでしょ?」
笑われた。
びっくりした。
だって、演歌聞いてりゃそう思うじゃん!
私、何か間違ったこと言ってるか?
などと思うのも無理はない。
現実は、いろいろ予想と違うものだ。
いつの間にか勝手に形成されていたイメージがどこから作られたのか、今となってはどうでもいい。
島に観光に来る人たちだってかなり洗脳されているよ。
ウニは潜って獲るものだと信じて疑わない。
まさか磯舟から網を突っ込んですくいとっているなどとは、考えもしないものだ。
とにかくね、想像よりもかなり地味なもの。
朝から酔っ払って、「てやんでい!」とか言っているイメージもあったが、そんなこともない。
磯漁師だけでは生活が成り立たないため、土方仕事にも出かけていくのが普通。
私の予想をはるかに超えた地味さが、今では笑える。
利尻の将来を憂う
ニシンが栄えた頃、二万人いたという人口は、今では五千人程度。
過疎化が進む一方の、最果ての小さな島。
そんな利尻で獲れるのが、高級食材だってところがまた皮肉んもんだよね。
有名な利尻昆布にしても、自分が関わるまでこんなに手間暇かかる大変なものだなんて知らずにいた。
ウニにしても昆布にしても、そのままで売れるものではない。
出荷できるまでが一苦労で、家族総出になるなんて、あまり想像できない世界だよね。
利尻の漁師って、すごく真面目だよ。
それを陰で支えている、奥さん連中の根性も見上げたものだ。
何十年も昆布干しができるということが、どれほど凄いことなのかも気づいていない。
当たり前のように働く、ひたすら働く。
私は、逆立ちしたって到底かなわない。
今では、漁師になるために内地から「漁師道」でやってくる人も出始めている。
この島にはもっと、若い人が必要だ。
しかし、夢と希望だけでは、ここでは生きていけない。
それだけは忠告しておきたい。
利尻の漁師の勤勉さは、想像を絶する世界なのだから。
それでも願ってやまない。
10年後も、20年後も、ここで漁師たちが活躍していてくれますようにと。