「利尻って、どんなところ?」
そう聞かれると一番困る。
私に言わせれば、何もない。
言い換えれば、全てがある。
禅問答のようだけど、答えるとしたらそうなってしまう。
「どんなところ?」という問いには、目的がない。
観光に来るのか、仕事で来るのか、移住するのか。
そんなツッコミを入れたくなる質問なのだ。
どんな場所でもそうだけれど、何のために来るかによって、その場所の体感など異なって然り。
そこを天国に感じるか、地獄に感じるかも、その人の経験値によって変わる。
非常にシンプルなのに、答えにくい質問のひとつだ。
基幹産業は、漁業と観光。
とても地味なところだ。
有史に残る災害がないのもまた一つの特徴とでもいえようか。
一生懸命一言で表現するとしたら・・・
のどか。
これに尽きる。
自然を受け入れるチカラ
とにかくのどかだ。
島民たちは、自然を受け入れる術をすんなりと身につけている。
ここではとにかく、自分ではどうすることもできないことが多いのだから。
それは、基幹産業の漁業に関わる人が多いことが理由だろう。
海の仕事は、すべて天気次第、海次第。
自分で予定を立てた通りになど、進むわけもなし。
休日は曜日で決まるわけでなく、海の都合で決まるのだ。
今日は時化だからお休み、みたいなね。
都会生活から一転して戸惑ったのがここ。
目標設定して、計画を立てて、なんて作業はここでは一切通用しない。
観光で来る場合だってそうだ。
天気次第で、非常につまらない旅行になってしまう可能性が高い。
この「自然を受け入れる」という感覚は、都会では味わいにくい感覚だ。
努力さえすればなんとかなる!と考えてきた私の思考回路は、これでたたき壊された。
さすが、第一次産業だ、などと思ったものだよ。
どんな計画も、ここでは無力だ。
だから島民はのどかでいられる。
深く考える、ということをしない。
今日のことは今日考えるしかない、という環境の過酷さを、過酷だと思ってもいない。
これはある意味すごい。
育ってきた環境が、人を作る。
何日も時化が続き、物流がストップしようが、誰一人として慌てない。
都会なら大騒ぎになっていることでも、ここではさらっと流される。
過酷な状況に身を置くほどに、人はたくましくなるのだろう。
私も少しは鍛えられたかな。